注意事項

※素人の戯言なので観賞本数増えるごとに点数は微調しています。悪しからず。

2013年12月30日月曜日

映画『ブリングリング』75点



2013年12月30日観賞。


前評判はさほど良くなかったのでハードル下げて観賞。
しかし全体的に悪くなかった。

同じく若者の暴走を描いた『スプリング・ブレイカーズ』とはまた違い、
コッポラらしくセンスフルにそんな様子を描きながらも、
コッポラらしくあくまでも暗喩的に
現代社会への痛烈な皮肉をこめた作品になっている。



ソフィア・コッポラの代表作でもある

ロストイントランスレーション』でも同様だが、

コッポラはあくまでもメタファー的脚本で
自分の映画を観賞者に主張してくる。

この手法と、音楽、そしてコッポラ的映像が
いわゆる「コッポラファン」、つまり、
「コッポラの映画好きって言ってる私ステキ」
的な風潮を生み出す源泉になっている気がする。


個人的には好きでも嫌いでも無いコッポラ作品だが、
今作はその得意のメタファーが披露される主題を
実際の事件にしたところにポイントがある。

それは、セレブ生活に憧れる無軌道な若者達が、
パリス・ヒルトンやオーランド・ブルーム、
リンジー・ローハンなど名だたるセレブの豪邸を
インターネットで調べ、留守宅への侵入と窃盗を繰り返し、
被害総額3億円とも言われた事件だ。














映画のポスターにもなっているこの写真から既に
コッポライズム全開!
全身ブランドで固めてドヤ顔のティーン達!

そしてさらにその期待は裏切られること無く、
「この映画をイケてるって思えないと私イケてない」
みたいな若者達の乱痴気は繰り広げられる。















女子の憧れルブタン、CHANEL…

















一見あくまでも淡々と彼女たちの
暴走から破滅を描いているように見えるが、
この映画のコッポラ的メタファーの核心はここにはない。


むしろこの映画の面白いところは、彼女らが逮捕された後だ。
ここからコッポラの現代社会、現代の軽薄な若者を
徹底して嘲笑い、馬鹿にしているドS的脚本が展開される。


特に顕著なのは、逮捕後の彼女たちのインタビュー映像だ。
主犯の女子は警察相手に「全部しゃべれば無罪放免になる?」
というクソみたいな台詞を平然と放ったかと思ったら、
「リンジーは何て言ってた?」という
無邪気を超えた無知丸出しの質問を投げかける。

そして何よりも愚の骨頂としてコッポラにつるし上げられたのは、
ウォール・フラワー』でも良い味出してたエマ・ワトソン。















逮捕前はこんなにイキがっていたのに、
逮捕後はいかにもアメリカらしく自宅にマスコミを招き、
横には母親と弁護士を配置し、神妙な顔でインタビューに答える。

















このシーンは最高にシニカルだ。

「心を入れ替えた」エマ演じるリッキーは、
教会などでチャリティー活動を熱心に行っているらしく、
アフリカでツアーを行い、井戸や学校を作ってるのよ
なんていう「きれい事」をドヤ顔で話し始める。

そしてインタビュアーから「どの国で?」と聞かれる。

するとリッキーは「正確な国名までは覚えてないけど…」
というまたしてもここで無知がバレるお粗末な回答。

でもそれに関して記者は全く攻めないのがまた良い。
この後もまたひたすらに茶番が続く。

将来の目標やゴールは?という問いに対しては

「平和と環境保護のために働くのが私の使命よ」

というもはやコントにしか思えない発言を真顔でかます。
さらにそう言ったかと思えば、気分が乗ってきたのか

「将来は指導者になってみんなに注目されるようなことをしたい」
「ビジネスの勉強をしてるのもリーダーになって人々の役に立つため」

というもはや矛盾という枠には収まりきらない
結局お前は自我の塊に過ぎないクソみたいな若者なの?

と、おじさんやおばさんは
猛烈に説教したくなるインタビューを見せつけられる。


だが、あくまでもコッポラは、そんな彼女たちに対して
「映画内」では非難も賛同も見せることはない。


あくまでも彼女たちの言動を客観的に描いて、
観賞者に突きつける。


扱う題材は違うが現代の象徴的な若者を描いた映画に
フィンチャーの『ソーシャルネットワーク』があるが、
『ブリングリング』の方がよりメタファーの皮を被ったふりをして
現代の若者達を嘲笑うコッポラの姿が鮮明に浮かび上がってくる。


つまり、この映画はメタファーを使って客観的に淡々と描いている
ふりをしているだけで、実際はかなり思想性の強い映画になっている。


わざとそうしたのかはコッポラに聞かないと分からないが、











実はさらにもう1周して、
「私はまだまだこういう現代っ子たちを神目線で描けるのよ!」
というコッポラの究極の自己満ドヤ顔作品な気がしないでも無い。


長くなったが、最後に。

今作のホームページには、
様々な有名人の好意的な感想が寄せられているが、
どれもこれも芯を食っていない中、
コッポラのメッセージ性をある程度理解して
言葉にしているのは平子理沙だけという
サプライズで本年度の映画館観賞を終えた2013年。

お後がよしいようで。


0 件のコメント:

コメントを投稿