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※素人の戯言なので観賞本数増えるごとに点数は微調しています。悪しからず。

2014年2月4日火曜日

映画『桐島、部活やめるってよ』85点



今更観賞。

これは日本映画史に残る名作でした。
DVD買ってしまった。
自分史的映画ベスト10に食い込む名作でした。

この映画が素晴らしいのは

●ニヒリズムに満ちた現代の高校生達を見事に描ききっている

●既存の青春映画を嘲笑うかのように
   心情描写の台詞を徹底的に排除し、
   登場人物の心理状況を観客に思考させる

●イケてる、イケてない、どちらでもない、これらの生徒を
   感情移入の誘導を用いずに「自然に」描いている

●高校生の如何ともしがたいニヒリズムを描きながら、
   それを打ち破る、前を向いて生きることを、
   陳腐な台詞=言葉ではなく、高校生達の「動き」で描いている

●つまりニヒリズムに満ちた現代の高校生達を描きながらも
   最終的にポジティブな映画として成立させている

⇒一切登場しない超リア充的象徴「桐島」を
   あくまでも「象徴的」に描くことで、
   以上の要素を完璧に映画内に還元仕切った


一個一個説明するのも我ながらめんどくさいので、
重要だと思うことだけ少し掘り下げて書いてみる。


従来の青春映画を嘲笑するかのように、と書いたが、
これはこの映画における特徴かつ、重要な評価ポイントだ。

この映画における高校生達は、
自分たちの気持ち=本音を安易に言葉にしない。


だってそりゃそうだ。
ドラマや映画の学園モノがどこか胡散臭いのは、
現実世界では絶対に言わないだろって言う台詞にある。

このアンチ商業主義映画的作りは、
全くテーマも物語も違うが、
先日観た問題作『オンリーゴッド(75点)』にも共通する。

つまり、「愛している」だとか「嫌い」だとか、
「感情を説明する」言葉なんて、
実生活では発すること何てほとんどないのだ。

そんなこの映画の根幹を示す、
個人的に最も好きなシーンがある。

そのシーンを説明するために少しだけ
登場人物をご紹介しよう。




この女子4人組。

帰宅部で「イケてる」風な左二人。

一番左のサナの彼氏はイケメンで全てに置いて万能な
今をときめく東出昌大演じるヒロキ。

ちなみにこのサナという女はとんでもなく嫌な奴で
誰もが嫌いになるくらいクソみたいな女。

逆に言えばそれは、松岡茉優が非常に上手く演じていると言うことだ。













そして左から二番目、
山本美月演じる校内のマドンナ・リサの彼氏は、
一度も劇中にはっきりと登場しない「桐島」だ。


つまり簡単に言えばこの二人は彼氏もいて、
見た目も可愛くて「イケてる」のだ。












そしてこの二人は、イケてるやつの特徴でもある
「一生懸命とかダサい」みたいなノリを何となく醸し出す。


その醸し出される雰囲気に何となく合わせているのが
橋本愛演じるカスミとミカだ。










この二人はバドミントン部に所属している。

帰宅部とバドミントン部。
この4人の人間関係を見事に表したシーンが冒頭にある。
僕はこのシーンがとても好きだ。

そのシーンは、
この4人組が廊下を歩きながら会話しているシーン。














帰宅部のサナがバド部のミカに言う。

「部活とかよくやってられるよね?」

するとミカは冷めた目でこう答える。

「いや、私は内申とかあるしさ…」


つまり、部活は内申を稼ぐためのもの、
別に一生懸命やってるわけじゃない、
私はあなたと一緒だよ、仲間だよ、

バド部のミカは帰宅部のサナの前で答えた一言で、
そういう目に見えない4人の意識みたいなモノが垣間見える。

で、良かったのがこの後のシーン。
帰宅部とバド部で別れ、部室前で二人きりになると、
ミカはカスミにごめんねと謝る。


私、バド本気で好きだから。
あの人達にマジなこと言ったってしょうがないし


この台詞が最高だった。


そう、「マジなこと」なんて言っても仕方がない。
僕らのコミュニケーションはそうやって成り立っている。



お前ら、本音でぶつかり合え!


金八やGTOはそう叫ぶかもしれない。
でもそんな学園生活は「フィクション」なのだ。


本当に本音でぶつかり合ったらどうなる?
そんなの成立するわけがない。


だから「マジなこと言ってもしょうがない」のだ。


映画前半のミカのこの一言で、

『桐島、部活やめるってよ』は、
既存の青春映画の常識を
ぶち破る映画であることを証明して見せた。


もちろんこれだけではない。
映画全編にわたって、このマインドは貫かれる。









































あまり書きすぎるとネタバレになってしまうが、
そのマインドの極地はやはりラストシーンだろう。


まだ観ていない方のために詳細は避けるが、

好きなことや目標や意味をもって学園生活を送るオタクが
一見全てを手にしているように「見える」万能型に、
無意識に打ち勝つラストは秀逸かつ辛辣だった。












ここでのヒロキの「涙」には泣けた。
野球部のキャプテンのフリがさらにきいていて、さらに泣けた。


でも僕が映画で初めてとも言って良い、
本当に泣いてしまったシーンはこれです。
















この男子バレー部越しに映るミカちゃんの
「行かなくて良いんだよ!」で思わず涙が溢れしまいました。











というわけで、この映画は全体的に素晴らしいですが、
個人的に最も刺さっているのは、ミカちゃんです。


もちろん神木くんの役者としての幅広さを
まざまざと見せつけた映画部のオタクっぷりにも
拍手を送りたいし、賞賛すべき点はたくさんある。

橋本愛は圧倒的に美形過ぎて、
逆にこんな高校生いねーよって思わなくもないけど。


とりあえず、観ていない方は是非観て下さい。
日本映画史に残る、
そして既存の青春映画の常識を打ち破る名作です。

エンディングテーマも切なく、映画にマッチしています。


4 件のコメント:

  1. 私は20歳の学生です。この映画はあまり良い作品とは思えませんでした。
    芦田さんの感想を踏まえつつ、逆立場から少し感想を書かせていただきたいと思います。突然すみません。

    まず、この物語が評価されているのは「高校生のありのままの世界を映した」ということにあると思うのですが、
    私の感覚で言うと、それが逆に「ありのまますぎて、つまらない。」と思わざるを得ませんでした。
    ・クラスの中にイケてるイケてないどちらでもない、がいるのは当たり前
    ・イケてる方に多少意見を合わせるのも当たり前
    ・本心丸出しの会話なんてほぼしないのが当たり前(本心を話すのすぐ先には何マジになってんの?が必ず来るため)
    結果、なんとはなしにただの「高校生活あるある」に見えてしまいました。
    もう少し、マジでぶつかり合っていてた世代の人にはこれが新鮮に映るのでしょうか。わざわざ映画にするのであればなにかしらの大問題を高校生活あるあるの中で描いて行くべきだと思いました。その大問題が、桐島の部活やめる事件では弱すぎました。
    ちなみに今の高校生は桐島の世界をリアルに生きているからこそ、ありえない純愛や熱血を描いた作品が心に響くのでしょうね。恋空以降やたらと恋愛映画が勃興しているのはそのためでしょう。
    とにかく、ありのまますぎて、「何を見せられたんだ」感の強い作品でした。
    ミカちゃんは良かったですね。
    あの場面で「行かなくていいんだよ!」
    と言える人、現実にいないんで。

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    1. コメントありがとうございます。
      全て「あなたの感覚」なので特に反論もありませんが、
      あなたがおっしゃっているつまらなさの感覚も何となく理解できます。

      一つだけ言わせてもらうと、映画というフィクションのエンターテイメントにおいて、あなたのいう「当たり前」、「ありのまますぎて、つまらない」を作品として世の中に送り出す勇気、その心意気は同じ製作者の端くれとして尊敬しますし、賞賛に値すると思っています。
      自分が作り手なら、それを映像化する勇気、当たり前を映像化し映画として成立させる勇気、それを世に送り出す勇気を持てるか甚だ疑問です。
      だからこそアカデミー賞の受賞につながっているのかなと思います。

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  2. 初投稿です。この映画大好きです!特に橋本愛ちゃんと山本美月ちゃん、松岡茉優ちゃんの大ファンになりました。
    当然「あまちゃん」でも愛ちゃん、麻友ちゃん、東出昌大くん、落合モトキくんの活躍楽しんでいて能年玲奈ちゃんや有村架純ちゃん、大野いとちゃん、足立梨花ちゃんらのファンになりました。

    そんな自分にとって気になるブログの発言を見つけました。(「2ちゃんねる」でもスレが立っている)

    私は映画で恋をする : 映画じゃなくても語れるよ(木村晶彦の雑食系ブログ)- ライブドアブログ
    blog.livedoor.jp/basedonfacts/archives/67942969.html
    映画をどう見ているかや人間観察、直感、その人の「持っているモノ」があるかどうか
    それを見抜けるか、能年玲奈&橋本愛を高く評価したなどの記事で

    >>あそこまで目の輝きを感じる若手女優やアイドルは、『あまちゃん』では彼女と橋本愛だけだ。
    >>あとは、いつも熱烈プッシュして下さるクウガさんには申し訳ないけど、
    >>全員きれいに横並び。今後、演技力を磨いて立派な女優さんになるとしても、そこそこ止まりだと思う。
    >>(「そこそこ」になるのも大変なことです)

    関連記事
    クウガ555さんと私の、「アイドル往復書簡」のコーナー! - ライブドアブログ
    blog.livedoor.jp/basedonfacts/archives/67824796.html‎

    ・・・・・、
    どうでしょうか?桐島~やあまちゃん、好きとしてショックですね・・・。

    木村氏の持論(直感や持っているモノ、少し見ればその人のことはわかる、人間観察など)は言いたいことはわかりますが、それでも・・・。

    なんか交流を持っているクウガ氏の熱さなどを侮辱や手のひら返しし、馬鹿にしている感じ、自分の記事の補強材料にしている等の後味の悪さも感じますし、
    何よりも桐島~で愛ちゃんだけでなく真由ちゃんや、あまちゃんで有村架純ちゃん等を好きになった者としてもイラっときました・・。

    ・・・、しかし、この木村氏この記事のコメント欄で自分で「(アマチュアのくせに)評価は受けている」や「遅咲きの才能が開花した」だとかプロであり代表作(それも日本映画史に残る名作や社会現象ドラマ!)を持っている彼女たちと自分を同等に語ったり、

    過去記事では「アルゴ」で「(年明けに桐島を鑑賞したくせに)桐島を日本アカデミー賞よりも目をつけた(桐島を最初に評価したのは自分という意味・・・。)」「私の言うことに間違いはない、見ている本数が違う」「私ほど映画を見ている人間はいない」など前述の「遅咲き発言」と同じく自信過剰、というか思い上がっている軽薄な人間という感じがしますね・・・。
    (「そこそこ発言」も「威張り腐った三流評論家」そのもので酷い・・・。)

    ただこの木村氏、近々「文芸社」から「電子書籍」を出版するらしいからプロ評論家デビューするらしいです。
    いったいどこまでいけるやら・・・・

    と、長文&初投稿のくせにネガティブな話題&一部脱線してすいません。
    しかし、この木村発言かなり気になりました・・・。

    太郎さんはどう思われましたか?
    教えてください!

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      どの部分への返信を求められているのかがよくわからないのですが、

      >>あそこまで目の輝きを感じる若手女優やアイドルは、『あまちゃん』では彼女と橋本愛だけだ。
      >>あとは、いつも熱烈プッシュして下さるクウガさんには申し訳ないけど、
      >>全員きれいに横並び。今後、演技力を磨いて立派な女優さんになるとしても、そこそこ止まりだと思う。

      この意見に関してと言うことで良いんでしょうか。
      そもそも自分はプロの映画評論家ではありませんし、このブログも趣味で個人的な記録として残すと言うことを第一目的として始めたものなので、「プロ書評家の木村さんの意見に公式に反論する立場にありません。
      それに映画はどんな解釈も成立する者であるからこそ面白いと思うので、木村さんの意見はそれはそれとして認められるべきだと思っています。

      それでも、あくまでも私的な意見を言わせて頂ければ、僕はそもそもあまちゃんを観ていないのでそれらの俳優陣を評する資格を持ち合わせていません。

      あえて桐島に関して言えば、橋本愛だけで無く、あの映画に出演して台詞を持っていた全ての生徒達の演技が素晴らしかったと僕は思っています。
      特に映画デビュー作とは思えない東出くんの演技には感嘆しました。

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